川崎地質は、路面から深さ3m以上にある空洞を検出するけん引式空洞探査車を開発した。「チャープレーダー」と呼ぶパルス圧縮方式のレーダーを複数搭載し、従来と同じ解像度で2倍以上の深さまで探査できる。路面直下だけでなく、埋設した下水管の周辺で生じた空洞の状況なども一度の走行で分かるようになる
けん引車(左)と、チャープレーダーを搭載した空洞探査車
地中の探査は、レーダーから地中に電磁波を放射し、その反射波の変化から埋設物や空洞を判別する。従来の探査車で使われているインパルス方式のレーダーでは、深く探査するために電磁波の電圧を上げる必要があった。
ところが、電圧を上げると電磁波の周波数が下がり、波長が長くなるため、収集データの解像度が低くなるという課題があった。一般的な探査深度は約1.5mだ。
これに対して、今回採用したチャープレーダーでは、電圧ではなく送信時間を長くすることで出力を高める。周波数を任意に変化させることができるので、高い解像度と深い探査の両立を可能にした。
■探査車を時速40~50kmでけん引
開発した探査車には、計8台のチャープレーダーを搭載。そのうち7台は解像度が10~20cmで、深さ3mまでの空洞を面的に調査する。同時に、残りの1台が25~50cmの解像度で深さ5mまでの範囲をカバーする。複数のチャープレーダーから発する電磁波が互いに干渉しないよう、放射のタイミングをずらす高速リレー方式を採用した。
空洞などの調査は、探査車を時速40~50kmでけん引しながら、路面下の状況を5cmおきに計測する。1車線分の幅に当たる約2mの範囲を一度に調査できる。収集したスキャンデータはけん引車内のパソコンでモニタリングし、専用のソフトで解析や空洞判定を同時に進められる。

道路でのテスト走行による探査結果の例。路面から深さ2.5mと4mのあたりに空洞が検知された(資料:川崎地質)
埋設物の老朽化などが原因で生じた地下の空洞は、道路の陥没につながる危険があり、国や自治体による空洞探査業務の発注が増えている。川崎地質によれば、発注規模は年間20億円にも上るという。
同社は道路でテスト走行を実施し、地下4mまでにある空洞や埋設管を検知できることなどを確かめた。今後、地下深部の空洞探査だけではなく、空洞が発生した原因の特定と対策の提言を併せた事業を展開する方針だ。